تسجيل الدخول「ううぅ、一生の不覚です……」
「無念」
朝から落ち込んでいるかの姉とあか姉。
昨日先に眠ってしまったことを生涯最大の失敗とか言ってかなりヘコんでしまっている。
そんな大げさな。
「今日で終わりじゃないんだからさ。今夜だってあるじゃない」
そう声をかけた瞬間、2人の瞳が確かに光を放ったような気がした。
漫画やアニメでよくみかけるあの「キュピーン」ってやつだ。
「依子さん、ひよりちゃん!今日の部屋割りのために勝負ですよ!」
「手加減しない」
じゃんけんで手加減ってどうやってするんだろう。
「今日こそは負けないもん!」
「へへへ。かかってこいや」
挑戦を受けた2人もやる気満々と言った様子。
なんだろう、この茶番。
「ううぅ、まさか2連敗なんて……」「なんじゃこりゃぁ&helli
少しだけ心の扉を開き、みんなへの正直な想いを語ったあの旅行から数か月。 間近に迎えた文化祭の準備に追われ、わたし達生徒会は多忙な毎日を過ごしていた。 夏休みから引き続き行っていたダンスの練習は大詰めを迎え、もういつでも人前に出せるレベルに来たと思う。あとは細かい部分を微調整すれば完成だ。 クラスでもみんな受験勉強の合間を縫って何やら一生懸命に作り上げている模様。当日はお手伝いをするつもりだけど、何が出来上がっているのか心配な面もある。 体育祭といい、毎年イベントのたびに遊ばれているような気もするからなぁ。 そしてある意味きっぱりと拒否を突きつけた姉妹たちについてなんだけど、ハッキリ言って何も変化がない。 相変わらずのゆきちゃんスキーだし、スキンシップもそのまま。油断すると身の危険を感じるのも相変わらず。主にあか姉が危険。 最悪距離が開いてしまう可能性もあるんじゃないかと思っていたから、以前と変わらず接してくれるのはありがたいんだけど、これで本当に大丈夫なのかと心配にもなってしまう。 ひよりには将来を考えてないように見えるって言われたけど、本当は誰よりも将来を考えてるんだよ。姉妹たちがいつまでも健やかに、心穏やかに過ごしていけるように神経を砕いてる。だからこそわたしの存在感が強すぎてはいけないんだけど。「ゆき~今日の晩御飯なに~? ピーマンは勘弁な~」「ゆきちゃん、今度はこんな編集方法を編み出したんですけど、確認してもらえます?」「ゆき、今夜は寝かさない」「ゆきちゃん! 新しい曲のダンス教えてよ!」 こんな調子で、あいも変わらずわたしを中心に回っている現状。途中でおかしなのが混じってたけど無視。 せっかく意を決して厳しいことを言ったのにこんな調子でいいのかな。あとピーマンはちゃんと食え。「なんだか馬耳東風って感じだなぁ」「誰が馬だコノヤロ」 わかってんじゃねーか。「言いたいことは分かるぞ。でもな、何度も言ってるようにそんな簡単に変わるような気持ちなら、最初から弟を好きになったりしてねーんだよ。人を見る目はあるくせになんで色恋に関しては壊滅的なのかねぇ」 壊滅的って。そこまで?「だけどみんなには悲しい思いをしてほしくないんだよ」「ばっか。誰かに恋をするってことはいいことばっかりじゃねーんだよ。時には傷つき、時には泣いて、酸い
「う~、頭いちゃーい」 ぐわんぐわんと頭の中で鐘が鳴り響く。ついでにちょっと気持ち悪い。 昨日はおいしいジュースを飲んでなんだかいい気分になってたけど、なんでこんなことになってるんだろう。「ゆきちゃん、昨日のことは何も覚えてないんですか?」 かの姉が心配そうに覗き込んできた。姉妹たちはまだ化粧や身支度に勤しんでいる。化粧の必要がない男の子でよかった。 そんなことはない。わたしに忘れるという概念は存在しない。 全部覚えている……けれど、結構まずいことをいってしまったなぁ。わたしを解放してください、か。 わたしはいったい何から解放されたいんだろうか。 みんなからの想い? 決まっているこれからの運命? それとも……この人生全てから?「ゆきちゃん? 具合が悪いならもう少し横になっていていいですよ。着替えだけここに置いておきますから、ゆきちゃんの荷物はこっちでまとめておきますね」 わたしの荷物の中にあるはずの着替えがなんで用意できるんだろう? と思ったら女性用だった。 そう言えば三日分の衣装はみんなで持ってきてるんだったっけ。わたしが用意した服の意味がなかったな。「ゆきちゃんの荷物、わたし達が持ちますからね」 ギクッとした。わたしの荷物……。昨日言ったことの意味も入ってるのかな。「どうしたんですか? その状態じゃ、大きな荷物を抱えるのは大変でしょう? 一人では大変でもみんなで分担すれば軽いものですよ」 穿ち過ぎか。だけど、みんなで分担すれば軽いもの……。 わたしの抱えてるものも、みんなで抱えれば少しは軽くなるのかな。そんなこと、出来るはずもないけれど。「ううん、大丈夫。自分の荷物は自分で持てるよ。それより昨日の後片付けをしないと」「そうやって無理ばかりしなくていいんですよ。甘えられるときは甘えてください。でないとわたし達も寂しくなってしまいます」 そうやってわたしのことで喜びを感じてくれるのは嬉しいんだけど。 どうすればみんなの執着心をわたしから逸らすことが出来るんだろう……。「ゆきちゃん、あなたの抱えているものが何かは分かりませんし、無理に聞こうとは思いませんけど、少しはわたし達のことも信用してはくれませんか?」「ん……」 決してかの姉たちの事を信用していないわけではない。むしろこれ以上ないほどに信頼感を持っている。 だけど
ホテルの部屋でお菓子パーティー。「それじゃ、女子会始めるぞ~」「「「いえーい!」」」 女子会じゃねー! ここに! 男の子が! いますから! 忘れんな!「まぁまぁゆきちゃん、見た目だけの話だから」 そうか、見た目だけならまぁ。 とでも言うと思ったか?「はい、ゆきちゃん」 かの姉にチョコレートを口に放り込まれた。うん、美味しい。「ゆき、餌付け」 違うわ。 まぁ甘いものを食べると大人しくはなるんだけど。これって餌付け? コンビニでかの姉の見つけたフルーツジュースが美味しそうだったので、いろんな味のものを買い込んできた。 わたしが最初に飲んだのはシャインマスカット。渋味のないブドウの味が爽やかで、あっという間に飲み干してしまった。おいちい。 ひよりもいよかんをすっかり飲んでしまっている。そんなに美味しかったのか。柑橘系好きだもんねぇ。 あか姉はパイナップル。普通のジュースなんだけどあか姉が飲むと独特だなぁと思ってしまうのはなんでだろう。 でも不思議なことにこのジュースを飲んでると、塩気の物がほしくなるんだよね。なんでだろ。 梨味のジュースを飲みながらより姉の買ってきたビーフジャーキーをガジガジ。普段はこういうものをあんまり食べないんだけど、体が塩分を欲しているような気がする。「ゆきちゃ~ん、なんだか気持ちよくなってきちゃった~」 そう言ってひよりがしな垂れかかってきた。なんか最近こういうシチュエーションになったことがあるような気もするけど、まぁいいか。楽しいし。 梨味のジュースもすぐに飲み終わり、次に手に取ったのは白桃。桃の味ってなんだか優しくて懐かしい気持ちになるよね。「こんなおいしいジュース初めてかも~。地元にも売ってるのかなぁ」 缶を眺めて商品名を確認。なるほど、日本のプレミアムということで産地の名前が記載されている。わたしが今飲んでる白桃は福島県産なのね。 震災から復興してる街を応援するためにもどんどん飲まないと。「わたしなんだか熱くなってきたかも。少し脱ごうっと」 女装して出かけていたのでインナーに来ていたのはキャミソール。「あははは。男の子なのにキャミソールって! おかしー!」 自分の姿が妙におかしくなってしまい大爆笑。なんだか気分もいいし、下も脱いじゃおう。「あははは! キャミにドロワーって! どこ
「ふわぁ~気持ちいい~」 フラフラのより姉。「あははは! よろこさん酔いすぎです~」 かの姉、あんたもだよ。誰だよろこって。呂律が回ってねー。 わたしがより姉に肩を貸し、かの姉にはあか姉が肩を貸している。ひよりにはお水と万が一に備えてのエチケット袋を用意させてある。「真っすぐ歩け酔っ払いども!」「あたしは真っすぐ歩いてるぞ~。道が曲がりくねってるのが悪いんだぁ」「そうですよねぇ。S字クランクが連続してます~。教習所ですかぁ?」 一般道だよ。道もこれ以上ないくらい真っすぐだよ。 酔っ払いどもをどうにか電車に押し込み、ホッと一息。Suicaくらい自分で出せっての。 電車内は人でごった返している。地元の球団のユニホームやメガホンを持った人が多いのは試合でもあったのかな? そういえば今年は成績が良くて、優勝も視野に入ってるんだっけ。野球はあんまり詳しくないから分かんないけど。「ちょっとより姉。ちゃんと立って。電車内で座り込んだらダメだって」 足に力が入っていないのか、放っておくとずりずりと沈み込んでいってしまう。「ゆき~だっこ~」 人がいっぱいの車内で何言ってんだ。「あれ、YUKIちゃんやん」「ほんまや。生で見たらめっちゃ可愛い」「やっぱり姉ちゃん達と仲ええんやなぁ」「YUKIちゃんって男の娘やろ? ハーレムやん」 ハ、ハーレム!? そ、そんな風に見えるのか? アラブの石油王じゃあるまいし……。「そうかな。どう見ても百合にしか見えやんよ」「確かに! 百合の園やわ」 ですよねぇ。知ってました。「そういやユニバのナイトショーに出てたんやろ? うちも見に行きたかったわぁ」「ほんまに? それは行きたかったな。またやってくれへんのかな」「急遽決まったみたいやし、無理ちゃうかな」 漏れ聞こえてくる情報からすると、先日のナイトショーは結構な評判になっているようだ。 またやって欲しいという声はありがたいけど……。「ゆきちゃんよかったね。好評だったみたいじゃん」「……そうだね。みんなが楽しんでくれたならよかったよ」「また、やりたいんじゃないの?」「ううん、そんなことないよ。あの日一日で十分だよ」 わたしは本当に嘘つきだ。本当はステージに立ってみんなに歌声を届けたい。 だけど、わたしにはその機会は永遠に訪れることはないんだ。「ゆきちゃ
スイーツ巡りを堪能した後、腹ごなしも兼ねてあちこちを散策して回った。 普段はあまり行かないゲーセンでリズムゲーをしたり、ボーリングやビリヤードで体を動かして消化を促す。 三時間もする頃にはお腹が空いてきた。「もう腹減ったのかよ。どんだけ胃腸が丈夫なんだ」「健康優良児と言ってくれるかな」「まぁいいけどよ。それで、何を食べたいか決めてあるのか?」 今日出かける前に、それぞれ何を食べたいかを決めておくようにと言われている。 わたしもいろいろ探してたんだけど、さすが大阪。食べたいものがいろいろありすぎて困っちゃう。「わたしはまだ決めきれてない……」「なんだ、いつも率先して決めるゆきにしては珍しいな」 だってどれも美味しそうなんだもの。「わたしはお好み焼きが食べたいです」「またかよ! 楓乃子は昼にも食べてただろうが。どんだけ粉もんが好きなんだ」 わたしも一口もらったし、お好み焼きはどっちかというとお昼ごはんにでも食べたいかな。「もつ鍋」「相変わらず選択が渋いな、茜。たしかに美味そうだな」 もつ鍋は候補に入ってなかったけど、確かに美味しそう! 悩みが増えてしまった。「わたしはね! 串カツが食べたいなー!」 それそれ! 大阪といえば串カツだよねー。でもてっちりとか、居酒屋で土手焼きなんかも美味しそうなんだよね。「ひよりはあたしと同じだな。それで、ゆきはどうする? 今のところ串カツに二票だが」「うーん、うーん」「どんだけ悩んでるんだ。ちなみに候補はいくつあるんだ?」「居酒屋てっちりもつ鍋串カツかすうどんイカ焼き中華肉吸いたこ焼き……」「待て待て待て。いくつ出てくんだよ。呪文みたいになってるじゃねーか」 体がいくつも欲しい。「ゆきの候補にもあったし、二票入ってるし、串カツにするか。ゆきも別に文句はねーだろ?」 あの呪文をちゃんと聞きとってたのか。より姉もやるな。「もちろん! ソースは二度漬け禁止だからね」「それくらい知ってるっての。全体をひたひたに漬けて食べるんだろ」 より姉のことだから何度もじゃぶじゃぶ漬けるんじゃないかと心配だったけど、それくらいは知っているようだ。「それじゃ、さっそく向かおうか! お店はあたしが探してあるからよ」 おぉ、より姉がリーダーシップを発揮している。 さすが長女、頼もしい。 わたし達は
「うん、美味しそう!」 ずらりと並んだ多種多様な食べ物。 普段あまり口にすることのないいろんな料理を前にして、期待を隠せないわたし達。 わたしが注文したのはボタニカリー。 鶏がらスープに玉ねぎ、野菜、スパイス、ハーブが煮込まれていてスパイシーで美味しいし、副菜がアートのように盛り付けられている。 より姉はシンガポールチキンライス。 かの姉はお好み焼き。 あか姉はキーマカレー。 ひよりはハラミ重と黒毛和牛フィレステーキ トリュフがけ。「ステーキはみんなで食べようね」 そう言って購入しようとしているのはいいけれど、お値段がべらぼうに高い!「ちょっとひより、お小遣い大丈夫なの?」「そろそろなくなりそうだから、ゆきちゃんに借りないとダメかも」 そう言って苦笑いするひより。苦しいなら無理してステーキなんて注文しなくていいのに。「だってみんなでシェアするもの欲しいじゃない」 そんな可愛らしいセリフを言われては止めることもできない。 もう、みんなのことを考えてくれるのは嬉しいけど、やりすぎだよ。「そのステーキはわたしが買うから。ひよりはこの後に行くデザートでお金を使いなよ」「そんな悪いよ。わたしが勝手に買おうとしてるだけなんだし」「みんなのためでしょ? わたしもみんなと食べたいから買うだけだよ」 みんなで食べるものを末っ子に負担させるというのもなかなかに目覚めが悪い。 ここは一番経済力のあるわたしが出してもみんなから異論は出ないだろう。「ゆきちゃん、ありがとう」「いいんだよ。どれも美味しそうだね」「うん!」 元気よく返事をするひより。ほんとに良い子だ。 フィレステーキも含め、みんなでシェアした料理を堪能してお昼ご飯の時間は過ぎていった。「さて、いよいよ今日の本番だね!」「昼飯食ったばっかじゃねーか。もう食べ歩きすんのか?」「もちろん! 時間は有限、甘いものは別腹! 時間の許す限り食べつくすよ!」 すでに候補は三つほど見繕ってある。あとは観光がてらにあちこち探し回るのもいいだろう。 ということで最初に向かうはハービスプラザ四階にあるチョコレート専門店。 わたしはショコラパフェ、ひよりはチョコラータケーキ、あか姉はタルト・オ・ショコラ。 より姉とかの姉はハーブティーのみ。「せっかくスイーツを食べに来てるのにもったい







